機能性表示食品として販売するための手続きは申請ではなく届出と言われています。医薬品を製造販売するためには厚生労働省に申請をする必要がありますが、なぜ機能性表示食品の場合には届出なのでしょうか。この記事では申請ではなく届出と言われる理由を解説し、それを切り口として機能性表示食品がどういうものなのかをわかりやすく説明します。
申請と届出では何が違うのか
医薬品は申請なのに対して機能性表示食品は届出と言われる理由を理解するには、申請と届出の違いを知る必要があります。申請は何かをしてもらうために必要になる手続きです。医薬品の場合には厚生労働省に審査を依頼しているため、申請書類を整えて提出しなければなりません。
そして、審査を受けた結果として認められれば医薬品として製造販売できるようになります。それに対して届出は審査などの行為を要求する手続きではありません。これから何かをするというときに、公的機関にその事実を伝えるための手続きです。
基準やガイドラインが定められている場合には、それに則っていることを示す書類を合わせて届出をします。機能性表示食品の場合にもガイドラインに則した形で書類を整えて消費者庁に届け出ることが必要です。そして、消費者庁に受理されれば機能性表示食品として販売できるようになります。
審査がある医薬品は国が責任を取る
申請ではなく届出なので機能性表示食品は医薬品と違って審査がありません。医薬品の審査では厚生労働省によって臨床試験などの結果の分析がおこなわれ、確かに医薬品に有効性があって安全性も十分に高いことが確認されます。
データとしての正しさや統計処理の正確性なども確認され、確かに国としてこの疾患に対して使って良い医薬品だと承認するのが審査のプロセスです。そのため、医薬品の申請をした場合には審査を通して厚生労働省が有効性や安全性について認めて、確かに申請された通りだと認めたことになります。
国として効果がある医薬品だと判断し、使用して良いと決めるために審査がおこなわれているのです。そのため、医薬品の場合には安全性に問題が生じたときには国が責任を取ります。クロロキンやサリドマイドのように薬害の問題が起こったときに国が主導して対応したのは国が責任を持つ形が整っているからに他なりません。
機能性表示食品は届出なので国は責任を取らない
機能性表示食品制度は機能性を持つ成分を使った食品の届出をして、機能性を表示できるようにする制度です。科学的根拠によって機能性があることを示さなければ機能性表示食品として認められることはありません。機能性表示食品の届出をするときにも科学的根拠となる書類を提出することが求められ、その内容に基づいて表示の文言を決めていなければなりません。
ただ、届出の内容について消費者庁は申請を受けて審査をするわけではないので、機能性成分の効果効能や表示内容との関連性については国は責任を取らない仕組みになっています。機能性表示食品の届出をした企業や個人が責任を取るのが特徴です。
審査はなくても受理のための手続きはある
機能性表示食品の届出は審査がなく、国が責任を取らないのなら提出するだけで確実に通るのかと疑問に思う人もいるでしょう。ガイドラインに則っていることや、表示内容が科学的根拠と齟齬を起こしていないことを確認する作業は消費者庁が実施しています。
問題があった場合には指摘して差し戻し、再提出をしなければなりません。大抵の場合には一度差し戻しを受けることになっています。審査はなくても受理するためにきちんと書類は確認しているのです。ただ、届出者が提出した科学的根拠に誤りがないか、反対する科学的根拠が世の中で知られていないかといったことを徹底的に調査するわけではありません。
明らかに虚偽の内容が含まれていれば指摘する可能性はありますが、基本的には届出書類に含まれている科学的根拠を参照し、その事実から判断して表示する文言が過大な表現になっていないか、確かに根拠があると言えるかを見ているだけです。
そのため、消費者庁は効果効能などについて責任を取らず、届出者が責任を持つ仕組みになっています。
機能性表示食品の届出は通りやすい
医薬品の申請をしても審査が通らないことはあります。国としては大きな責任を負うことになるので、確かな有効性と安全性に関する科学的根拠が整っていないと認めないことがあるのです。希少疾病の治療薬やがん治療薬、ウイルスのワクチンなどのように早急に承認して社会問題の解決に使わなければならないようなケースでは例外的に審査が早いこともありますが、何年もかけて審査をすることもあります。
しかし、機能性表示食品の場合には国が責任を取るわけではないので、消費者にとってデメリットになるような誇大広告になっていないなら受理するというのが通例です。そのため、機能性表示食品の届出は比較的通りやすく、開発を進めやすいことが知られています。
重要なのは科学的根拠が十分にあることと、届出者が表示内容についての責任を取る覚悟を決める必要があることです。自社研究によって科学的根拠を見出して届出をするというケースが多いですが、自社でしか研究をしていなかった場合には第三者による確認が取られていないのが不安になりがちです。
そのため、第三者機関に委託をして再現実験をしてもらうといった工夫をしているケースもあります。
消費者としては機能性表示食品に表示されている内容は根拠があって信用できるものです。その期待を裏切るようなことになると企業の信用は失われてしまうでしょう。誰もが納得する根拠があり、さらに食べたり飲んだりして効果が少しでも感じられるというのが理想的です。
届出自体は受理されやすいのは確かですが、機能性表示食品を販売したときの消費者からの反響を考慮して十分な準備をする必要があります。先に製品化してから機能性表示食品の届出をするケースも多く、消費者にスムーズに浸透させられると期待しているのが通例です。
⇒「機能性表示食品」って、なに?食品に表示するための条件について解説します!
届出者が責任を取るのが機能性表示食品
機能性表示食品は消費者庁に届出をして受理されると販売できます。医薬品の申請と違って効果効能を国が認めて責任を取るわけではないのが特徴で、届出者が責任を取る仕組みになっています。結果的に機能性表示食品の届出は比較的通りやすいですが、届出者は責任を負うことを自覚して科学的根拠を集める必要があるのが特徴です。